インプラント手術が無事に終わってひと安心ですが、まだ抜糸が残っていると思うと、少し緊張しますよね。とくに初めての手術だと、「抜糸って痛いのかな?」「いつから普通の食事ができるんだろう」「仕事や育児に影響が出たらどうしよう」と、日常生活への復帰を前に不安を感じていませんか?
抜糸の流れと術後の正しい過ごし方を事前に知っておけば、痛みやトラブルへの不安は解消され、回復を早めることができます。この記事では、インプラント術後から抜糸までの流れを解説します。
抜糸前と抜糸後の注意点や、インプラントの抜糸で痛みを和らげるための準備や対処法もご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
以下は、インプラント手術後から抜糸までの流れは5段階に分けられます。
それぞれ解説します。
まず、インプラント手術では、歯茎を切開して顎の骨にインプラント体を埋め込み、傷口を縫い合わせます。インプラント埋入手術の縫合は、切開した歯茎が開かないように固定し、感染を防いで治癒を促すのに重要な処置です。
手術は局所麻酔でおこなうため、術中に痛みを感じることはほとんどありません。手術が終わると、ガーゼを噛んで止血し、抗生物質や痛み止めなどの薬が処方されます。
手術後は、抜糸をおこなうまでの約1週間〜2週間、ご自宅での安静期間に入ります。安静期間は、手術した場所の傷口が治り、歯茎が安定するのを待つための大切な時間です。
歯科医師の指示を守り、飲酒や喫煙、激しい運動などを避けましょう。また、食事は硬いものや刺激物を控え、手術した場所になるべく触らないように注意しなくてはなりません。
抜糸のために来院した際、まずは歯科医師による傷口の治り具合の確認です。歯茎がきちんと閉じているか、腫れや炎症といった異常がないかを丁寧にチェックします。
傷の治りが遅いと判断された場合は、抜糸を数日延期する場合もありますが、順調に回復している場合は、そのまま抜糸の処置へ進みます。
傷口の確認で問題がない場合、いよいよ縫合した糸を抜き取る抜糸の実施です。抜糸の処置自体は、専用の器具で糸の結び目を切り、ピンセットで糸を引き抜くだけなため、数分で終わります。
通常、麻酔は必要ありませんが、痛みが不安な場合は表面麻酔を検討してくれる場合もあります。痛みが不安な方は、麻酔を使用したい旨を事前に伝えておきましょう。
抜糸が終わったあとは、インプラント体と顎の骨がしっかりと結合する期間に入ります。インプラント体を顎の骨が結合する期間は、下顎で約2〜3カ月、上顎で4〜6カ月程度が目安です。
骨とインプラント体が完全に一体化するまで、安静に待ちましょう。
インプラント手術後の抜糸は、一般的に術後約1週間〜2週間後におこなわれ、痛みはほとんどなく、あってもチクッとする程度です。抜糸は、手術で縫い合わせた歯茎の傷口がふさがったのを確認しておこないます。
傷の治り具合には個人差があるため、歯科医師が傷口の経過を診て抜糸のタイミングを判断します。基本的に、抜糸は麻酔を使用せずにおこない、処置自体は数分で終わる簡単なものです。
インプラントの縫合に使われる糸は、以下の3種類です。
1つずつご紹介します。
ナイロン糸は、合成繊維でできた青色の糸で、抜糸が必要な非吸収性の糸に分類されます。
表面がツルツルしているため汚れが付着しにくく、細菌が繁殖するのを防ぎやすいのが特徴で、術後の感染リスクを低く抑えられるのがメリットです。
また、糸の強度としなやかさのバランスが良く、術者が扱いやすい点もインプラント手術で選ばれる理由です。
絹糸は、その名の通りシルクを原料とした天然素材の糸で、抜糸が必要な非吸収性の糸に分類されます。
ナイロン糸に比べて柔らかくしなやかなため、結びやすく緩みにくいのがメリットです。また、肌触りが良いため、縫合した部分の違和感が少ないのも特徴です。
ただし、糸の表面がザラザラしていて汚れが付着しやすいため、ナイロン糸よりも感染のリスクがやや高いとされています。
吸収性糸は、手術後に抜糸をする必要がなく、体内で自然に分解されて溶ける糸を指します。
吸収性糸は、抜糸のためだけに通院する負担をなくせるのがメリットです。また、傷口の治りが早い方の場合は、抜糸前に糸が食い込む不快感を避けられます。
ただし、完全に溶けるまでには数週間〜数カ月かかるため、その間に汚れが付着するリスクがあります。そのため、インプラント手術では非吸収性の糸が選ばれるのが一般的です。
インプラント手術後に歯茎を縫い合わせて抜糸するのは、傷口を保護して感染を防ぎ、治癒を促すためです。手術で切開した歯茎が開いたままだと、食べかすや細菌が入り込んで炎症を起こすリスクがあります。
また、糸による縫合によって傷口を安静な状態に保ち、インプラントと骨の結合をサポートするのはもちろん、出血を抑えて手術後の痛みや腫れを軽減する役割もあります。
インプラント手術後に歯茎を縫い合わせて抜糸するのは、感染リスクを軽減し、インプラントの成功率を高めるのに重要な処置です。
インプラント手術後から抜糸までの期間に気をつけることは、以下の6つです。
それぞれ解説します。
術後から抜糸までの期間は、硬いものや刺激の強い食べ物を避け、柔らかく消化の良い食事を心がけましょう。
手術後の傷口はデリケートであり、硬い食べ物を噛むと患部を傷つけたり、縫合した糸が切れたりするリスクがあります。そのため、おかゆやスープ、ゼリー、豆腐など、あまり噛まなくても食べられるものがおすすめです。
また、唐辛子などの香辛料や、熱すぎる食べ物も血行を良くしてしまい、痛みや出血の原因になるため避けるのが安心です。
手術当日から抜糸までは、血行が良くなるような行動は控えましょう。激しい運動や長時間の入浴、飲酒は、体内の血の巡りを活発にし、痛みが増したり、出血が止まりにくくなったりする原因になります。
また、喫煙は、血管を収縮させて傷の治りを悪くするだけでなく、感染のリスクも高めます。手術後は安静に過ごし、入浴はシャワー程度に済ませるなど、身体に負担をかけない生活を送ってください。
傷口の早い回復のため、指や舌で患部に触れたり、頻繁にうがいをしたりしないように注意しましょう。気になって触ってしまうと、細菌が入って感染を起こすリスクがあります。
また、強い力でのうがいは避けてください。傷口を保護するかさぶたを剥がしてしまい、治りが遅くなるドライソケットの原因にもなりかねません。うがいをする際は、水を口に含んで優しく吐き出す程度にとどめるのが大切です。
お口のなかを清潔に保つため、手術した箇所以外の歯は、柔らかい歯ブラシで優しく磨くようにしてください。手術した部分の近くは、縫合した糸を傷つけないよう、とくに慎重に磨く必要があります。
歯ブラシの毛先が当たらないように気をつけ、歯間ブラシやデンタルフロスの使用も、抜糸が終わるまでは控えたほうが安全です。また、殺菌成分の入ったマウスウォッシュを処方された場合は、歯科医師の指示に従いましょう。
歯科医師から処方された抗生物質や痛み止めは、指示された通りに飲み切るのが重要です。抗生物質は、傷口からの細菌感染を防ぐための大切なお薬です。
痛みがないからといって自己判断でやめてしまうと、あとから感染症を引き起こすリスクがあります。
痛み止めは、痛みが我慢できない時に服用してください。薬を正しく服用するのは、手術後の経過を順調にし、抜糸までの期間を安心して過ごすために不可欠です。
手術後の強い痛みや腫れが数日経っても引かない場合や、縫合した糸が取れてしまった場合は、すぐに手術を受けた歯科医院へ連絡しましょう。手術後の強い痛みや腫れが数日経っても引かない際は、傷口で何らかのトラブルが起きている場合があり、自己判断で放置すると、症状が悪化するリスクがあります。
また、糸が取れると傷口が開くリスクもあるため、不安な点がある場合は抜糸の予定日を待たずに、歯科医師へご相談ください。
インプラントの抜糸後は、以下の5つに注意が必要です。
1つずつご紹介します。
抜糸当日の食事は、傷口を刺激しないよう、おかゆやスープ、ヨーグルトなど柔らかいものを選んでください。抜糸したとはいえ、歯茎はまだ完全に治癒したわけではなくデリケートな状態なため、硬いものや辛いもの、熱すぎるものは血行を促進し、痛みや出血の原因になります。
咀嚼の際は、抜糸した側とは反対側でゆっくり噛むように意識しましょう。抜糸後も、傷口の回復を順調に進めるために、食事内容への配慮が大切です。
抜糸した部分の歯磨きは、傷口を刺激しないように当日は避け、翌日から柔らかめの歯ブラシで優しくおこなってください。抜糸直後はまだ傷口が完全に閉じていないため、歯ブラシが強く当たると再出血や痛みの原因になります。
抜糸した部分以外は通常通り磨いて構いませんが、抜糸した部分を強く磨くのは避け、毛先が軽く触れる程度の力で汚れを落とすようにしましょう。
抜糸後約2〜3日は、飲酒やサウナ、激しい運動など血行が良くなる活動は控える必要があります。血の巡りが良くなると、傷口の血管が広がってしまい、痛みが出たり再出血したりするリスクが高まります。
デスクワークや軽い散歩程度は問題ありませんが、ジョギングや筋力トレーニングといった心拍数が上がる運動は避け、傷口が落ち着くまでの数日間は、できるだけ安静に過ごすように心がけましょう。
抜糸後の傷口が気になっても、指や舌でむやみに触らないように意識してください。抜糸した部分は、治りかけの段階でかゆみや違和感が出る場合があります。
しかし、気になって触ってしまうと、指についた細菌が傷口に入って感染を起こしたり、刺激によって治りが遅れたりする原因になりかねません。できるだけ気にしないように努め、自然に治癒するのを待ちましょう。
抜糸後、数日経っても強い痛みや腫れが引かない場合は、我慢せずにすぐに治療を受けた歯科医院へご連絡ください。通常、抜糸後の痛みは当日か翌日には落ち着き、徐々に和らいでいくのが一般的です。
痛みが日に日に強くなる、腫れがひどくなる、出血が止まらないといった症状がある場合は、何らかのトラブルが起きているおそれがあります。自己判断せずに、専門家である歯科医師の指示を仰ぐのが安全です。
インプラントの抜糸で痛みを和らげるための準備や対処法は、以下の5つです。
それぞれ解説します。
抜糸の痛みが心配な方は、事前に痛み止めを服用しておくと、痛みを和らげる効果が期待できます。
歯科医院で処方された痛み止めがある場合、抜糸の予約時間の1時間ほど前に飲んでおくのがおすすめです。薬の効果が現れるまでに時間がかかるため、処置が始まるころに効いている状態を作れます。
ただし、自己判断で市販薬を飲むのではなく、事前に歯科医師に相談し、指示された用法・用量を守るようにしてください。
抜糸の前日はしっかりと睡眠をとり、体調を万全に整えておくのが、痛みを軽くするために重要です。体調が悪いと、普段は気にならないようなわずかな刺激にも敏感になり痛みを感じやすく、とくに睡眠不足は心身の緊張を高めます。
リラックスした状態で処置を受けられるように、前日は夜更かしを避け、栄養のある食事を摂るなど、身体を休ませるのを意識しましょう。
抜糸に対する痛みの不安が強い場合は、その気持ちを事前に歯科医師やスタッフに伝えておくのが安心です。あらかじめ伝えておくと、歯科医師もより丁寧に声がけをしながら処置を進めてくれたり、表面麻酔の選択肢を提案してくれたりします。
不安を共有するだけでも気持ちが楽になり、心構えができるため、精神的な緊張を和らげるのに役立ちます。
抜糸の処置中は、ゆっくりと深呼吸を意識し、できるだけ体の力を抜くと、痛みを感じにくくなります。痛みへの恐怖で、無意識のうちに体に力が入ってしまう方は多いです。
しかし、体に力が入ると筋肉が硬直し、かえって刺激に敏感なる場合があります。処置台の上で大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出すのを繰り返してみましょう。
どうしても痛みが怖い、あるいは痛みに弱い方は、表面麻酔の使用をお願いするのが1つの方法です。表面麻酔には、糸を抜く際のチクッとした感覚を鈍らせる効果が期待できます。
表面麻酔は、歯茎の表面に塗るジェル状やスプレー状の麻酔薬で、注射針を刺すわけではありません。すべての歯科医院が表面麻酔に対応しているわけではないため、痛みに不安な場合は、「表面麻酔は使えますか」と歯科医師に相談してみましょう。
インプラントの抜糸は手術後約1〜2週間が目安で、痛みもほとんどありませんが、術後の正しい過ごし方が傷口のきれいな治癒とインプラントの定着に不可欠です。抜糸までの食事や歯磨きの注意点を守り、感染などのトラブルを防ぎましょう。
不安な点は自己判断せず、歯科医師の指示に従うのが安心です。
当院では、インプラントはもちろん、虫歯や歯周病治療においても、痛みやご負担を軽減できる治療を心がけております。歯科医院が苦手な方も、お気軽にご来院ください。
医療法人社団隆嘉会 ソレイユデンタルクリニック 理事長
山田 嘉宏(やまだ よしひろ)
1990年 昭和大学歯学部 卒業
1990~1992年 東京医科歯科大学補綴科 勤務
1992~1993年 茨城県友部歯科診療所 勤務
1993~1999年 品川区共立歯科 分院長 勤務
1999~2003年 よしひろ歯科クリニック 開院
2003年 医療法人社団隆嘉会 よしひろ歯科クリニック 開院
2014年 医療法人社団隆嘉会ソレイユデンタルクリニック 開院
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
午前 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ● | ● |
午後 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ● | ● |
午前:09:00~13:00
午後:14:30~18:00
●:9:30~12:30/13:40~17:00
休診日:水曜・祝日